夜想曲U
広大な夜空を、なぜか晴れ渡った青空と間違えた。
多分それは、あまりにそれが美しかったから。暗闇が夜の冠だとすれば、この景色は答弁の余地もなく夜失格だ。遥か西に覗く満月はもうすぐ自分の仕事を終えようとしているというのに、その光を浴びる砂たちはその明るさにおぼれ、踊るように青い照り返しを放っている。
風はいつしかやんでいて。
露出した肌に触れる夜気はやっぱりひやりと冷たくて。
耳に届くハーモニカの音色が、まるでどこまでも続く細い道のように感じられる。
(……ハーモニカ?)
ぼんやりと意識をめぐらせて――――
――――ようやく、ラーシャ=シモンズは自分が覚醒していることに気が付いた。
どうやら、自分は死に損ねたらしい。
砂漠の上に敷かれた毛布の上でむくりと身を起こし、ラーシャはそう分析した。あいまいだった記憶と意識が、夜の刺すような冷たさで急激に明瞭になっていく。最後に見た景色は、仰いだ夜空に浮かんだ白い月。それがいま沈みかけているあれだとしたならば、意識を失っていたのはせいぜい数時間といったところだろう。
あたりを見回して、すぐ側に素っ気無く放置された手荷物を発見する。ろくに中身の入っていない小さな鞄と、兄から渡された一振りの剣。その両方を確認して、ラーシャは心から安堵の息を吐いた。
心に余裕が生まれたからだろうか、先ほどから聞こえていたハーモニカの音色がやけに耳についた。不快ではない。ハーモニカの、その楽器が奏でる音を最大限に引き出した限界の音。ついぞ彼女は、そんな音色など聞いたことがなかった。
演奏者は、すぐそばにいた――――鞄が置かれていた方向とは別の側。組まれた薪から弱々しい焔が上がっていた。そこに写ったのは火にくべられた安物のポットと、鉄串に巻かれながら焼き上がりを待つ携帯食だった。
そして、さらにその向こう。薄い炎越しをはさんで反対側に、一人の青年の姿が見える。
言うまでもなく、ハーモニカを奏でているのはその青年のようだった。青年? 自分の分析に疑問を覚える。男であるのは間違いない。ただ、その年齢だけが不思議とつかめなかった。
彼は目を瞑って一心に、しかし繊細に楽器を動かし曲を奏でていた。どこかで聞いた覚えのあるフレーズ。何だろう、と思ってすぐに思い当たる。そしてその演奏技術に驚嘆した。
細い、細い音。まるで氷でできた管みたい。計算され、組み上げられた音の構成と焚き火の立てる不揃いな音が、薪のはぜる音が不思議と調和し、ひとつの協和音を奏でる。
立ち上がることも、声をかけることもできず。
ラーシャはその光景に見入り、曲に聞き入っていた。
――――だから、声をかけられたときには驚いた。
「や、おはよう。調子は?」
どうやら彼のほうは、こちらがとうに目を覚ましていたことに気付いていたらしい。反面ラーシャは曲が終わっていたことに気付けず、次にそれが自分に向けられた問いかけだとすぐには気付けなかった。
「あ――――ありがとう。あなたが助けてくれたの?」
「まあ、一応そういうことになるのかな。運が良かったね、僕が通りかかって」
よく聞けば、まだ幼さを残す声音。青年、と呼ぶより少年と呼んだほうがしっくりくるようだ。
「驚いたよ。突然倒れてるんだから」
言って、軽く彼は苦笑した。笑われているようで気に食わないが、事実なので仕方ない。
「タイミングが良かったのかな。普通、倒れてる旅人なんてすぐに魔物の餌だからね。
……どうしてこんなところに?」
「別に、話すほどの理由はないわ」
「――――やれやれ。命の恩人にそれはないんじゃない?」
「本当よ。理由も、何もない。
ただ……なんとなく。なんとなく、モロクに行こうと思っただけ」
「とんでもない話だよ、それは。砂漠をなめるのもいいかげんにしておいた方がいい」
少し厳しい口調で、彼は言った。あるいは怒っているのかもしれない。
「砂漠はね、危険なんだ。気候だけじゃない。凶暴な魔物が、それこそ星の数ほどいるんだから」
「わかってるわ。そんなこと」
「いいや、わかってないね。それに、不調だからかもしれないけど――――その程度の腕なら、町から離れない方がいい」
「――――なんですって?」
少年の言葉に引っ掛かりを覚え、ラーシャが声をあげる。
「……どういうこと、それは」
「よく周囲を見てみなよ。気付いてないの?」
静かな鋭さを含んだ問いかけさえ、少年は軽く受け流す。ラーシャは小さく顔をしかめながらも、さっとあたりを見回した。連なる砂丘。代わり映えのない、貼り絵のような世界だけが広がっている。
そこには何もない。少なくとも、目に見えるものは、何も。
「――――なんだ、本当に気付いてないんだ」
驚きよりもあきれを含んだ声。ラーシャが反論するより早く、少年は焚き火にくべてあった薪の一本を手にとった。何を、と彼女が思うのとほぼ動じ、少年がそれを手近な砂丘の向こう側に投げ捨てる。
きゃん、という短い悲鳴が聞こえた。
「――――ッ!?」
人ではないその声に、ラーシャは背筋を凍らせる。いつのまにか立ち上がっていた少年は足元のワンドを手にとり、緩やかにそれを構えた。
いまさらながらに、ラーシャは少年の姿がアコライトのそれだと気付いた。
「囲まれてるよ。さっきからずっと。
言ったよね、倒れた旅人は普通すぐにモンスターの餌になるって。君だって例外じゃなかったんだよ」
もはや隠れる意味がなくなったと悟ったのか、砂丘の陰――――それもあたり一面にそびえる砂丘のほとんどから、赤く光る相貌が覗く。月光に照らされるその毛並みはつややかで、雄大だ。数も、十や二十ではない。
「狼さ。いつもはそれほど攻撃的じゃないけど、腹がすいたら話は別ってことだろうね」
どこか他人事のように、少年はそんなことをのたまう。
立ち上がり、剣を手にしながらラーシャは叫んだ。
「逃げるわよ、早く! この数が相手じゃあ、とても――――」
「大丈夫だよ。所詮は群れだからね。
リーダーを叩けばそれで終わる」
少年がそういうのが早かったか、それとも輪を狭めた狼たちがいっせいに地を蹴るのが早かったか――――たぶん、大差なかっただろう。
「はっ!」
気合と共に、使い慣れた剣を斜めに切り上げる。飛び掛ってきていた狼はそれで前足を切り飛ばされ、続いて振り下ろされた剣に頭蓋を叩き割られた。頭蓋を砕く鈍い感触といっしょに血液をばら撒きながら、また一匹の狼が命を失う。しかしラーシャはそれに気を緩めることもなく、振り向きながら剣をまっすぐに突き出した。すぐ側で構えていた狼が、首筋に切っ先をもぐりこまされて悲鳴をあげる。
ぞろりと引き抜けば、剣の刀身は獣の血液で真っ赤に染まっていた。
「なんだ、割とやるじゃん。君」
のんきな声が聞こえる。ラーシャは狼の攻撃が一段落したのを見計らって、声の主に目を向けた。
そして彼女は息を飲んだ。少年のたたずむその周辺に、無残にも数匹の狼の体が転がっていた。別段、目立った外傷はないが――――確実に、息が止まっている。
呼吸一つ乱していない少年は軽く微笑んで、ラーシャに言葉をなげかける。
「さっきの言葉は訂正するよ。それだけの腕があるなら、このくらいの群れぐらい一人で十分じゃない?」
「……いいえ、無理よ。あなたがいるから、まだ無事なだけ」
素直に本心が出た。少年とラーシャを取り囲んだ狼たちのうち、実際に攻撃を仕掛けてきたのはほんの一部だ。多くは、いまだ姿をあらわした場所を動かずにこちらを……否、少年だけを見ている。
その瞳に灯っているのは、間違いなく恐怖の色だ。野生の狼たちの多くが、この、幼さを残す少年に恐怖を覚え飛び掛れないでいる。ある意味、少年が狼の大部分を引き付けていてくれるから、ラーシャは散発的に襲い掛かってくる狼の相手をするだけでいいのだ。
もし、この場にいるのがラーシャ一人だけならば、間違いなく狼たちはいっせいにその牙を向くだろう。そうなれば、到底捌ききれるものではない。
少年が苦笑を浮かべる。
「……いつまでも“君”や“あなた”じゃ言いにくいね。僕の名前はシリウス=シンシリティー。
君は?」
「ラーシャ。ラーシャ=シモンズ」
「じゃあラーシャ、とっとと片付けようか。
一番向こうの砂丘にいる三匹の狼、見える?」
まるで散歩にでも誘うかのような軽い口調。つい、と少年が――――シリウスが目で指したのは、ここから小さな砂丘を二つ越えたところに見える比較的大きなそれだ。小さな丘のような感じさえ抱かせるそこの頂に、シリウスの言うとおり三匹の狼の姿が見えた。
「見えるわ。あれがリーダー?」
「たぶんね。ぬきんでて体が大きいし、さっきからずっとこっちを睨んでる。それこそ、一瞬の隙を突いてやるって感じで――――ね!」
語尾を上げながら、シリウスは振り返りもせずにワンドを振るう。背後から忍び寄っていた狼がその頭を殴打され、地に倒れるのが見えた。
「さっさと終わらせようか」
言うが早いか、シリウスが駆け出す。半歩送れて、ラーシャが続いた。
反撃に移った獲物に対し、周囲の狼たちが低い唸り声を上げる。しかし二人に立ち止まる意思がないことを悟ると、それまで沈黙を守っていた狼たちも砂を蹴り、二人に襲い掛かってきた。
前を走る少年の背中を眺めながら、ラーシャはただ呆然と息を呑む。
狼たちは、まずシリウスに牙を向いた。当然だ。彼らにより近い場所にいるのは、先を進むシリウスなのだから。片手では数え切れない数の狼が、ほぼ同時にシリウスに迫り――――次の瞬間には、地面に沈む。なにが起こったのか、ラーシャの目では正確に捉えることもできない。
ただわかるのは、その洗練された身のこなしだけだ。一匹の瞳をワンドの先端で突き刺したかと思えば、それを抜きざま飛び掛る狼の脳天に重い一撃を加える。長柄の武器はそれを扱う速度によって威力が何倍にも跳ね上がるが、シリウスの行動はそれを踏まえて余るものがあった。
不意に恐怖を覚えたのは気のせいか。
「シリウス――――」
二人は対象の狼との距離をどんどん詰める。突き進む道の周囲には狼の新鮮な死体がどんどん転がっていく。
走りにくい砂の上でもまったく足をとられることのない少年を見ながら、ラーシャは小さく問い掛けた。
「あなたは、いったい何なの?」
答えは素っ気無い。
「――――ただのアコライトさ」
答えが、どれだけ素っ気無くとも。
言うシリウスが、
悲しそうに苦笑するさまだけが
やけに脳裏に焼きついた。
シリウスはさらに足を速める。
すぐ近くまで迫った外敵に、リーダー格の狼が低い唸り声を上げる。
けれど、それは一瞬にしてあっけない。
距離を詰めたシリウスは、狼が攻撃に移るより遥かに早く――――そのワンドを狼の脳天に叩きつけていた。
狼たちの撤退は、素早かった。
「さすがは野生の獣、かな」
そんな感想を漏らし、結局汗ひとつかかず息ひとつ乱していない少年は焚き火の元に戻った。傍らに投げ捨ててあった火鋏みで炎にくべてあったポットを取り出す。同じく投げ出してあった小さな鞄からカップを取り出すと、シリウスはポットの中身……おそらくは紅茶をカップに注いだ。
ほのかに湯気が立ち上る。
「ラーシャ、いつまでも立ってないでこっちおいでよ。
お腹減ってない? パン、そろそろいい感じなんだけど……ちょっと焼きすぎてるかな?」
声をかけられ、ラーシャは我に返った。けど、どうにも頭が混乱している。何か言いたいことが山のようにあるはずなのに、不思議とひとつも出てこない。そもそも、その「あるはず」の言いたいことの全貌すらつかめない。
結局、促されるままにラーシャは元の場所に戻った。毛布の上に腰を下ろしたあとで、ふとそのことに気付く。
「この毛布、あなたの?」
「ん、そうだよ……はい、どうぞ」
差し出された鉄串を受け取り、ラーシャは小さく礼を述べた。いえいえ、と軽く言うシリウスをぼんやりと眺めながら、鉄串に巻きつけられたパンに口をつける。鉄串には、火傷をしないために持ち手の部分にだけ厚い布が巻かれていた。ふんわりとした食感と、香ばしい麦の香りが鼻を突く。
実質ほぼ一日ぶりになる食事は、あっという間に終わってしまった。
しばしの無言が流れる。ストレートティーの入ったカップを受け取ったラーシャはその中身を吹いて冷ましながら、先ほどの戦いにおけるシリウスの動きを思い出す。体の運び、間合いの取り方、頃合のあわせ方。重心の保ち方もそうだし、そもそもワンドの扱い方だってそうだ。
シリウス――――アコライトの少年。しかしその動きは、到底自分には届かないものだった。いや、きっと、故郷で剣の修行を施してくれた兄や祖父でさえ、この少年に敵いはしないだろう。そんな強すぎる予感が、実感があった。
そこまで考えて、いや、認めて、ラーシャはぽつりと呟いた。
「フート」
「え?」
「フート第三行進曲三十六番……でしょ? さっきの曲」
彼女が目覚めたとき、シリウスがハーモニカで奏でていた曲だ。
「そうだけど、よくわかったね。あんな曲、知ってる人なんていないと思ったのに」
シリウスは苦笑した。恥ずかしいのか照れているのか、定かではない。
ラーシャはそんな少年に軽く微笑んで、言葉をつなげた。
「フート=リベロプ……作曲家にして音楽家。今から百年ぐらい昔の人間ね」
「そう。彼の遺作にして生涯唯一の作品、フート行進曲は全七十七の小節からなる壮大な一作。重なりあうその旋律は過去に多くの音楽家たちが感激し、涙を流したというけど、その七十七のうちにひとつだけ社会に受け入れられなかった個所がある」
「それが三十六番、女王に捧ぐ歌……でしょう? 繊細な旋律が繰り返されるほかの説と違って、単純に音をただ繰り返すだけの平凡な曲」
「でも、僕はこの個所が一番好きだよ。静かだし、聞き心地もいいし、なんと言っても一人で演奏できるからね、ここだけ。
……なんだ、ラーシャってこういう事知ってるんだ」
「嗜みで覚えさせられただけ。祖父が、王家に仕える以上この位は心得ておけ、って言ってたから」
「王家? ひょっとして君貴族なの?」
シリウスの驚きを含む問いに、ラーシャは小さく首を横に振った。
「いいえ。私は平民の出よ……ただ、私の家からは代々近衛兵が出ているの。私も近衛兵に選抜されたくて、昔から剣の修行ばかり積んできた。腕には、それなりの自信があったの、これでも。
でも……井の中の蛙ね、本当に」
ラーシャはそう言って、少し悲しげに苦笑をしてみせる。
その苦笑はそのまま微笑みに変わり、シリウスに向けられた。
「あなたの言葉ももっともね。自分があんなに動けないなんて、思わなかったわ」
「……君の動きはね、型にはまってるんだよ。どの流派か知らないけど、うん、完成度でみたら賞賛に値すると思う。
けど――――」
真面目なまなざし。ふと、実家にいたころ剣の道を教えてくれた祖父の顔が重なった。
だから、その先の言葉は容易に想像できる。
「――――なにぶん、実戦経験が足りないね。
上品な“試合”って形式の中でなら大丈夫だろうけど、そこを離れたら剣の初心者と何ら代わらないと思うよ」
聞きようによっては、これ以上なく彼女を侮辱した言葉。しかし、ラーシャは静かにそれを受け止める。
「……祖父にも、同じことを言われたわ」
苦笑か、それとも泣き笑いか、ラーシャは呟く。
「だから、実戦経験をつもうと思って旅に出たの。
モロクに行かなければいけない理由はないけど、旅をする理由は、それ」
「――――なるほどね、近衛兵か。いいじゃん、立派な目標だよ」
「でも、見たでしょう? 私の動き。私は、あの程度なの」
「馬鹿なこと言っちゃいけないね。いいかい? 言ったとおり、君は単に実戦になれていないだけだよ。僕が保証する」
「それをどうにかしようとして、死んでしまったら意味がないじゃない」
「人の話は最後まで聞きなって。
わかってると思うけど、この砂漠を抜けるとモロクに着く。モロクっていうのは大きな街だ。人口もそれなりにあるし、産業も盛んなんだ。
で――――提案なんだけど、君、自警団に参加してみない?」
「え?」
突然の言葉に、ラーシャが疑問符を挙げる。
シリウスは笑って、あたりを見回した。
「いま見たとおり、この砂漠には凶暴な魔物があふれ返っている。ま、大体はパッシヴだか問題ないんだけど、だからって無視できるわけでもない。今みたいに突然襲ってくるっていう可能性がないわけでもないんだ。
そこで組織されたのが、自警団だよ。街の周辺や、街道沿いのモンスターを定期的に駆除するんだ。別に加盟する必要はない。もともと有志でできた集まりだし、僕自身、しょっちゅう参加してるけど実際ただの有志だもん。
どうかな? 集団で行動すれば倒れたとこをモンスターに襲われることもないし、何なら僕が着いてもいいよ。悪い話じゃ、ないと思うけど」
軽い言葉。軽い言葉だけど、その瞳はとても真剣にこちらに問い掛けている。
しばらく迷って、ラーシャはその疑問を口にした。
「――――どうして、私に構うの?」
返事はすぐに。
そして、あまりに簡単に。
「――――暇つぶしかな」
からりとした笑みを浮かべながら答えたシリウスに、ラーシャは嘆息した。とんでもない答えだ、と思う。とんでもない答えだけど、確かに――――魅力的な話でもある。
ラーシャは静かに頷いた。
「お願いするわ。シリウス――――迷惑かもしれないけれど」
「ん、別に迷惑なんて思わないよ。なりたいものがあるってのはいいことだし、それを応援するぐらいは僕にもできるからね。気楽に考えてよ」
苦笑の混じった少年の言葉。おそらくはこれが本心なのだろうと、ラーシャはなんとなく悟っていた。
自然と笑みの浮かぶラーシャを見てか、シリウスが苦笑を深めて立ち上がる。
「じゃ、出発しようか。日が出ている間は行動できないからね。
夜が明ける前に、少しでもモロクに近づこう」
「任せるわ、シリウス――――あなたが思うように」
静かに、ラーシャ。
それはどこまでも本心で――――すでにラーシャは、シリウスを信用しようとしていた。
夜空の月は、もう地平線の向こうに姿を隠そうとしている。
暁までの僅かな時間すらも無駄にせず、二人は並んで歩き出した。